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20210805_こぼれおちてたありがとう_連合会の日ブログ記事

「こぼれおちてたありがとう」

金光教久居教会在籍教師 北川佐代


 私には、一歩そこへ足をふみいれると、心安らぎ、また心はずむ場所があります。それは図書館です。

 本との出会いは、叔父である、故出川正教先生が、御本部の金光図書館で御用をされておられた頃、まだ幼かった私達姉妹に、年に数回、図書館の貸し出し用の箱に、ぎっしりと本を詰め、送ってくださっていたことから始まります。

 幼い私には幼児用の絵本。五歳歳上の姉には、少し長い物語りを。

 年齢が上がるにつれ、内容も変化していき「人体の謎」について詳しく書かれた本を読んだときは、初めて知る、我が身体の秘密が解き明かされたようで、とても興奮したことを、よく覚えています。

 幼い子どもにとり、幼少期たくさんの本に触れ合うことくらい、重要なことはありません。自分では、決して選択することがなかったであろう「叔父チョイス」の本達を、いつでもふんだんに手にとっていた私は、本に関しては、本当に贅沢な環境で育ちました。

 この叔父のおかげで、本好きの土台が作られたことは間違いありません。


 その私が、この春一冊の本に出会いました。タイトルは「あめつちのうた」です。本教にご縁のある方なら、皆そうなると思いますが「あめつち」の文字に惹かれ手に取りますと、本の表紙のイラストは甲子園球場でした。全ての野球少年が、いつか自分もここでプレーすることを夢見る「聖地」甲子園球場。この本は、この「聖地」を「整地(備)」することにプロとしての誇りを持ち、地味に地道に、グラウンドを守り続けていることが書かれた物語りでした。

 読み終えた私が、一番強く思ったことは、この「整備のプロ」に対して、これまで何一つ知らず、感謝の念を持ってこなかったことに対しての、恥でした。私の息子(次男)は、平成19年度と20年度の2度、この甲子園球場でプレーさせていただきました。ずっと続けていた、野球人生の集大成となったのは、宇治山田商業高校野球部でした。先輩には、現在横浜ベイスターズに所属している、中井大介選手がいたり、同じ学年には、150kmを投げる投手もいて、チームメイトに恵まれ、甲子園出場が叶ったときは、これまでの、全ての努力が報われた気がしました。まず、今まで野球を続けてこられたことを神様に感謝し、これから彼の「聖地」で100%の力が発揮させていただけるよう、お祈り申し上げました。

 このとき、どれほどたくさんの方から応援していただいたことでしょう。ナインの親は、球場まで応援バスを出すのですが、なんとそのバスに三重県の先生方が多数同行してくださったのです。そして現地には行かれずとも、テレビ中継で応援して下さったたくさんの方々のお祈りのパワーは、息子に大きな力を与えてくださったようで、その試合はなんと息子のサヨナラヒットで勝つことができました。それが20年春の選抜甲子園大会のことです。帰宅した息子は「グラウンドすごかった・・・」と洩らしていました。そのすごいグラウンドが、なぜすごいのかを、この「あめつちのうた」は長年の時を経て、今私に教えてくれたのです。


 この小説の中に、こんな一説がありました。梅雨明け以来、まったく雨が降ってないグラウンドに、そろそろ一雨ざあっとほしいと言うA先輩に、グラウンドにとって、雨は降らないにこしたことはないのではないか、と聞くB後輩。それにA先輩はこう教えます。「あのな、大事なのはな、グラウンドの表面だけやない。もっと下の層や。奥の部分にまでしっかり水が届かんと、深さ30センチまで均一に水をふくんだ、柔らかくて、かわきにくいグラウンドにはならへんやろ。日光で表面はかわいたとしても、奥の層は水気をたっぷりふくんでるから、クッションみたいに衝撃を吸収してくれる。甲子園球場のグラウンドの最大の武器は、水持ちよく、水捌けよくやからな。」

 いくら内野に散水して、表面を湿らせたとしても、本当の雨にはかなわないそうです。深い部分まで、水が行き届くには、自然の力が必要だ…という箇所を読み、天地の恵みに深く感謝し、敬意をはらっている人々が、日々丁寧な仕事をしてくださるからこそ、最高のグラウンドで、プレーさせてもらえていたのです。阪神甲子園球場は、日本一の球場とも呼ばれるそうですが、今更ながらに、あの時息子が全力で戦えた場を整えてくださった、阪神園芸株式会社の皆様に、深く感謝いたします。

 そして、きっと・・・きっと来年こそは、息苦しいマスクを外して、選手も応援する人も、心から野球を楽しむことができますよう、願ってやみません。





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