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執筆者の写真konkomienet

20201005 スクールガード(連合会の日ブログ記事)

「スクールガード」

金光教入鹿教会長 肥田正博


 今から12~14年くらい前、子供たちが登校中に誘拐される事件が続いたことがあった。その時、全国的に地域の大人が、子供を守っていく活動として、「見守り隊」が結成された。私の住む紀和町でも、総会を開いて、そのことに取り組むことになった。スクールガード(見守り隊)の始まりだ。毎朝7時25分~30分に、教会を出発、教会から小学校までゆっくり歩いて10分ぐらい、所々で待ち合わせて登校する。私の長男、次男も小学生(現在は二人とも大学生)で、一緒に登校した。雨の日も、風の日も、雪の日も、見守った。

 広い道は、2列になって行く。先頭は団長さんと、5・6年生、一番後ろは、副団長と5・6年生、続いて私は最後尾を歩いた。始めた頃は、13~15人いたが、だんだんと減ってきたので、6~7年前から、遠方で通学する子も加わり、5分ぐらいであるが、いっしょに登校するようになった。当初は、信者さんも、角に立ってくださっていたが、年齢を重ねて、立つのがしんどくなり、引退された。また、昔は、おじいちゃん、おばあちゃんが、後ろから子供を見ていた。今は誰もいなくなった。少し寂しい気がする。

 私も、毎日子供たちの後姿を見ている。毎年、子供たちは、大きく大きくなる。私はだんだん小さくなる。

 スクールガードをしていると、いろんなことが起こる。最近は、暖かくなり、あまり雪は降らないが、以前は、年に1回くらい雪が降り、道路が凍結したこともあった。2月のある日、前日から雪が降り、明くる日は、一面真っ白な雪景色になった。道路はカチンカチンに凍結した。私は、教会を出て恐る恐る歩いたが、子供たちは、身が軽いのかすいすい歩いていく。私は、もう少しで学校という所で、ツルっと滑って倒れ、右手を強く打った。子供たちを送り届けた後、教会に帰ったが、右手の手のひらは、パンパンに腫れていた。私は、病院も行かず、痛いのを辛抱した。結局、完治するのに4ヶ月かかった。それ以降、雪道は、欠席することにさせてもらった。小学校の先生も、雪道で事故を起こし、大けがをし、半年間、休職されたこともあった。

 子供が小学校へ通っていた時、育友会(PTA)会長をさせて頂いた。ある時、市内のPTAの会長の会合があった。教頭先生といっしょに参加させてもらった。その時車の中で、教頭先生が「子供たちは、家庭環境が悪いのに、明るいのは不思議である」とおっしゃった。確かに、母子家庭、父子家庭が多い。私も、子供たちは、本当に明るいと感じる。有り難いことだ。

 5年前に危ないことがあった。学校に着く前に、曲がり角がある。そこは坂道を下った所で、見通しも悪い。恐らく、初めて通った車だろうが、私の横スレスレ10センチくらいの所をすり抜け、はっとしたことがあった。少しでもずれていたら、私も子供たちも、轢かれていたと思うと、ぞっとする。明くる日から、1列になって登校するようになった。最近では、注意喚起のため、グリーンの線が引かれた。

 うれしいこともあった。春の御大祭がせまっていたある日、私は横着して、作務衣のままスクールガードに行った。すると途中、女の子が「泥棒みたい」と言った。そうしたら、別の女の子は、「肥田さんは優しいから、泥棒じゃない」と、言い返してくれた。その子も優しい。この言葉は、一生の宝である。

 さらには、国際交流もあった。3年前、オーストラリアの5年生の男の子(母親は地元の方)がやって来たことがあった。何かの事情で、お母さんと兄妹が、半年間日本で暮らすことになった。妹は、保育所に通った。初めは、お互い緊張していたが、1週間ぐらいで、すぐに仲良しになった。言葉は違うが、心が通じるのだろう。1度教会に兄妹二人で遊びに来たことがあった。どういうわけか、すぐに、お広前、ご神前にやって来た。そして、ご神前にある太鼓をたたいて、帰っていった。子供がたたくのも初めてだった。何か感じたのであろうか。帰国する前日に、お母さんがお礼のあいさつに来られた。

 私がこの紀和町の入鹿に来たころすぐに、「おはようおじさん」という記事が新聞に載っていた。その人は、毎朝、小学校の校内に立って、あいさつをする。雨の日も、風の日も、雪の日も。それも、10年、20年。それを読んだ時、そんな人になれたらいいなあと思っていた。スクールガードをさせてもらうようになってそのことをさらに思う。15年前、脳内出血で倒れて少し体が不自由になったが、スクールガードは続けることができている。そして、2~3年してからは、毎日が有り難い。面白い、朝が楽しい。大人の方が子供たちに、守られている。

 先月9月8日、子供たちと一緒にいつものように登校すると、真正面に大きな虹が出ていた。スクールガードで初めてである。ああ、そうか。私は気づいた。「子供たちと神様をつなぐ、虹の懸け橋になったらいいのだ」と。虹さん、ありがとう。



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